「ウーマンエンパワー賛同企業」事務局では、賛同企業様の施策の参考になればという想いで、
様々な企業事例や専門家の取材記事を掲載しています。
今回は、経営者のための働き方改革セミナー(船橋市主催)でポイントを取材しました。
(社)クオリティ・オブ・ライフ創造支援研究所の理事長・森田氏によると、
「実は、経営者には『儲からなくなるのに行政は変なルールをつくってしまった』と思っている人が多いようですが、経営計画を達成するために必要な『能力数』で経営をすれば、しっかり達成できる」と言う。
経営計画に必要な人財や機械設備などの「能力」をどう可視化して整えるか?
「能力数」で経営すれば、固定の場所で8時間働かず、一定の場所じゃない細切れでも計画が達成できる、という考え方が基本。最低限のルール・仕組み、働き方改革や関連法などを整えようというものだ。
ただし、ワーク・ライフ・バランスやダイバーシティ・マネジメントは、人財側も整っていないと運用が回らない。施策が機能するためにも、責任をもって成果を上げてもらう支援が必要だという。
<人財が能力を発揮して労働力となるために> ※一部編集
◆人財側◆
□自身の生き方を明確にしている。その生き方の実現に必要な計画を立て、実行している
□自身の働き方を明確にしている。その働き方の実現に必要な計画を立て、実行している
□勤務先の経営、部門、個人、の計画を理解している
□勤務先の経営、部門、個人、の計画を達成する意欲・能力・活力がある
◆企業側◆
□労働者のライフデザイン/ライフプランを把握し、支援している
□労働者のキャリアデザイン/キャリアプランを把握し、支援している
□ワーク・エンゲージメントの実行支援と労務管理をしている
□働きやすい職場環境づくり(ハード面、ソフト面)に注力している
□コンプライアンス違反をしない、させない
生産性を縦軸、快適性を横軸とすると、日本は生産性は高くても快適性が低い、「ワーカホリズム」の人が多い。いわゆる仕事中毒だ。生産性も快適性も低い「バーンアウト」になることを防止するため、一定のルールを設けて管理しようというのが働き方改革だ。
但し、ここで注意なのは、働き過ぎ、働かせ過ぎはだめだが、「生産性が低くても絶対定時帰りでわがままOK」と国も言っていないということ。成果を出すためにワーク・エンゲージメントが必要だという意味であり、成果を出さないと居場所がないこと、成果を出せないと会社が危なくなってしまう、ということなどは、しっかり人財側に教育しなければならない。
労使双方が条件を満たすことで、働き方改革は初めて達成できる。
ワーク・ライフ・バランスという言葉も誤解されがちだが、要は「生活習慣を整えること」だという。
「仕事と私生活の調和」というのは、コンプライアンス違反がないことが大前提。
勤務先の経営計画と、自分の生き方・働き方の計画を両方とも達成することが目的であり、何事にも本気で全力投球が条件だ。お互いの希望をぶつけ合い、お互いの目標を達成するために労使とも倒れてはいけない。必要な能力開発、ワーク・エンゲージメント・働きやすい環境づくりのために、生活習慣を整えるということだ。
森田氏は、そのワーク・ライフ・バランスの成果を出す順序は、こうだという。
生産性の改善(働き方改革&労務管理)
▼
改善した生産性の継続・安定(ワーク・ライフ・バランス導入&推進)
▼
生産性の向上/向上した生産性の継続・安定(ダイバーシティマネジメント導入&推進)
例えば、ノー残業DAY。まず業務改善をして時間短縮ができないと、違う日に仕事を持ちこすだけとなる。
また、年次有給休暇の取得の日本の平均は48.6%で、国は70%を推奨しているが、これも業務改善を先にしなければ、「人を補てんして利益率が下がるだけ」で終わってしまう。
厚労省でも調査があるので、まずは従業員の満足度調査をやることもおすすめとのことだ。
ダイバーシティマネジメントとは、日本語でいうと「多様性の受け入れ」。多様性をどう有効活用して成果を出すかというもの。(多数派・少数派という捉え方は間違い)
特に中小企業では、大手のような専属部署や専任担当はつくれず、できる人が兼任で任されるということがほとんどだが、とにかく経営者が腹落ちし、「自分の言葉で想いを発信すること」が大事だと森田氏は強調した。
「WLBは儲かる」とアシザワ・ファインテック株式会社(習志野市茜浜/オーダーメイドの機械メーカー)の芦澤社長は語る。創業115年、4代目で年商は約30億円近いという。社員は140人(うち女性30人)、平均37歳だ。
かつての同社はメーカーなのに売れる商品がなく、顧客が減少していた。品質が劣悪で不良率100%以上で業績が低迷。社内には活気がなく命令されたことしかやらない空気が流れていた。採用は欠員補充程度で社員教育する余裕もないため、採用できない、育成できない、すぐ辞めていくの繰り返しだった。
「どうせ言っても変わらない」「社長が決めることであって自分は従うだけ(無責任・無関心)」という空気が流れ、社員は会社に期待せず、経営者も社員に期待しないという悪循環が続いていた。
90年代の長期にわたる業績低迷で取引銀行からは廃業勧告を受けた。
2000年に社長が交代後、2003年に創業100周年を控えて何とか好機にし、ベンチャー魂を取り戻したいと経営改革を模索。
何から始めたらいいかわからず、社長は以下を実践した。
① 社長が率先してトイレ掃除
② 全社員との定期的な面接(年2回)
③ 各部署で燻っていた不満・問題点を各部署の代表者を中心に改善するよう指示
④ 大企業病の組織の壁を壊す
⑤ 名ばかりの部長を廃止し、課長に権限移譲
⑥ 採用活動で自ら未来を語る
会社としては、幹部候補と将来像を描く『百年委員会』で作戦を練ったり、人材像『自燃人』を定め人物重視で幅広く採用。製造・開発部門など全部署に女性を配属した。階層別の研修プログラムを策定したりジョブローテーションで管理者育成をした。
加えて、2009年から順次以下のような制度を導入。
・パート社員から正社員に転換できる正社員登用制度
・育児や介護などライフスタイルの変化に応じて利用できる生活サポート短時間勤務制度(最短で週20時間~)
・新入社員1-2年目社員を対象としたメンター制度
・1時間単位で取得できる時間単位年次有給休暇
これらの様々な改革により、アイディアも生まれるようになり、新製品や新事業
による業績が向上。従業員満足度が上がったことにより、品質も向上しお客様満足の向上に繋がったという。
女性の定着率もUPし、過去3年の新卒定着率100%(12名)にもなり、大学のキャリアセンターからの学生紹介も増えたり、社員の家族・友人紹介も増えたという。
2016年ユースエール認定企業にもなり雇用対策効果に繋がった。
月平均の所定外労働時間が減少、年次有給休暇の取得率も79.4%から82.9%へ。新卒の2015~2017年度の離職率は4.3%になった。
芦澤社長は、働き方改革は経営者にメリットがあるから取り組むと強調する。
社員が満足することで顧客が満足し、売上・利益はUPするのだという。
今は余裕がないから・・・では10年後の会社は変えられない。
社長の本気・覚悟が問われる。
財産である社員の可能性を信じて、今こそ取り組んでみてはどうだろうか?
18年6月 ウーマンエンパワー賛同企業 事務局