2011年3月11日東日本大震災では、子ども900人弱を含む2万人近い人が亡くなりました。日本は4つのプレートが押し合う他に例のない地震大国。東日本大震災以降、プレートのひずみがたまっている地域に、次の大きな地震が来ると予測されています。
それまでに、ママが知ること、備えることで自分と大切な人の命を守ってもらいたい、悲しむ人を1人でも減らしたいと活動する(一社)スマートサバイバルプロジェクトの特別講師・かもんまゆさんの防災ママカフェ(18年6月時点で182カ所9,820人が参加)を取材しました。
かもんさんは東日本大震災では1200人以上のママに段ボール950箱を超える物資支援活動をする中で、子育て中の被災地のママたちからきいた話をママのための防災ブックを企画制作(↑写真右)。映像やスライド、ブックを使って、あの日何が起きたのか、どうやって子どもを守ったのか、そして今ママとして何ができるのかを、誰にでも分かりやすく全国でお話されています。
【地震には種類がある?】
地震には震源の場所によって異なる2種類の地震があります。
①直下型地震:いきなり突き上げられる、縦揺れが続く、揺れ時間は短い
②プレート(海溝)型地震:小さな横揺れから、次に大きく揺れる、揺れは長く大きく続く
たとえ、防災無線が聞こえなくても、海の近くにいて自分が今まで退官したことがないような巨大な地震が1分以上続くようなら「津波が来るかもしれない」と思って、海から遠い場所ではなく高い場所を目指して逃げる必要があります。(鉄筋のビルの5階以上)
【地震で亡くなる原因は「家屋倒壊」「家具の転倒」】
阪神大震災では、亡くなった方を検死したところ、9割が地震直後の15分以内に、家屋の倒壊や家具の転倒により、圧死や窒息で亡くなっていることが分かっています。
地震の瞬間~15分を何とか生き延びるためには、「つぶされない場所」に移動し、
頭を守る、しゃがむ、つかまるが肝です。子どもを守るためには、ママがまず自分の命を守ることが大切です。部屋にある家具は落ちない、倒れない、動かないように固定しましょう。
震度7、その瞬間は自分の意志では動けません。後悔しないために、できる防災は事前にやっておきたいものです。
【地震は準備ができる災害】
地震の際は、すぐ停電するため、正しい情報をとれるラジオ、スマホのソーラー充電池などが有効。大きな地震では「必ずけがをする」と考えて、止血パッドなどの救急セットも用意しましょう。
【地震速報は子どもを守る行動開始のゴング!】
せっかく地震を事前に知らせてくれる「緊急地震速報」が鳴っても、何もできなかった人が5割。玄関をあける、大声で家族に知らせる、机の下に入る、などやることを決めておきましょう。
【避難するときは】
人が殺到するので、ピンポイントで会う場所を決めておき、地震が起きてから玄関で「どこに逃げるんだっけ?」なんて困るなんてことがないよう、どこにどう逃げるか事前に家族で話し合っておきましょう。
【避難所や物資の配給は子連れには厳しい】
以前の震災では、治安が悪化し泥棒が横行して無法地帯になったほか、物流が止まり店にも品物がなくなりました。大きな余震が続く中、避難所は不特定多数のイライラ不安な人であふれていたそうです。また、とてつもなく不衛生で想像を絶する辛さだったとか。病気(下痢・嘔吐・ノロウイルス・肺炎など)も流行ってしまいます。都心では全員避難所に入れないともいわれていますが、大人数がいる割に静かで子どもの泣き声も目立ってママも苦労したよう。
備蓄品も、基準は成人男性のため、子どもと女性のものがずっと来ないという声がありました。生理用品やサイズのあったおむつ、ミルク・ベビーフードなどはしっかり準備しておきましょう。
炊き出しに赤ちゃんを抱っこして1000人以上の行列に並ぶのは厳しいですよね。
備蓄食も、子どもはまずいと食べないし、食べなれないと食べません。
普段から食べなれば乾物や食べ物、試食をした備蓄食などを準備し、おうちにも安心できるストックをするのがおすすめです。(「今買えなくなると困るもの」を備蓄!)
▼防災ママカフェでパンやごはんの備蓄品試食 子どもたちから美味しい!の声が
仮設トイレは和式なので普段から慣れておきましょう。何週間も仮設トイレが来なかった地域もあるため、子どもができるトイレも用意しましょう。
除菌シートとマスクが重宝したというママの声も多いようです。
ただし抱っこする子どもを合わせて、持ち運ぶ荷物は10キロ以内にしましょう。
お守りがわりに、普段からママバッグには防災ポーチを携帯するのもおすすめ。
【地震発生時で注意したい「バイアス」】
「バイアス」とは、根拠のない楽観思考のこと。自分にはとんでもないことは起こらないと思い込み、自分に不利益な情報を受け付けなくなる心理状態を指します。
災害時の心理として、心を守るためのスイッチが勝手に入ってしまうのだそう。
危険な状況にいるのに逆に笑ってしまったり、のんきに写真を撮ってしまっていたりという現象が起きてしまうのです。
1.災害時も落ち着いて行動できる人 10-15%
2.我を失って泣き叫ぶ人 15%
3.ショック状態で呆然として何もできなくなってしまう人(凍り付き症候群) 70-75%
大震災時にも、すぐ逃げる判断をせず、近所の人と「どうします?どこに逃げましょう?」なんて立ち話をしてしまっていた人は逃げ遅れてしまいました。
ハザードマップでは津波が来ない表示がされていたから、と高い山に逃げなかった小学校は、結果的に12mもの想定外の津波がきて、ほとんどの教員・生徒が亡くなってしまいました。先生に「なぜ裏山に逃げないのか」と叫んでいた生徒もいたそうです。
おかしいと思わない、受け入れない、というバイアスがかかるという注意点。
その場でしっかりした判断をできるように備えたいものですね。
かもんさんは、「地球が46億年に対して人類はたった700万年しか生きていない。人間の想定など全く絶対ではない。自然災害は男女差別もしないし子どもにも決して容赦しない。備災に正解はないが、今できることを後回しにせず、大切な人の命を他人任せにしないで」と訴えています。
そして、地球や地震の仕組みなどが子ども向けに書かれたわかりやすい絵本もあるので、普段から親子でも地震・災害をタブーにせず、よく話すことも大事だと言います。
守りたい家族の命。
もう一度この機会に子どもたちと一緒に見直してみてはいかがでしょうか?
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(一社)スマートサバイバルプロジェクト特別講師・かもんまゆ氏
<プロフィール>
東日本大震災の際、被災地のママと子どもたちへの物資支援活動を機に、ママのための防災ブックを企画制作。2018年6月現在、全国180ヵ所以上でママのための備災講座「防災ママカフェ®」を開催、9600人を超える人が参加。NHK教育「すくすく子育て」他メディア出演多数。