【出展者インタビュー】ターゲットを明確にしたキャッチで自分で集客することが大事
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「ウーマンエンパワー賛同企業」事務局では、企業様の施策の参考になればという想いで、様々な企業事例や取り組みの取材をしています。
今回は、株式会社セブン‐イレブン・ジャパン(東京都千代田区二番町8番地8)取締役 常務執行役員 秘書室長/ダイバーシティ推進部長の藤本圭子氏にお話を伺いました。2018年版「女性が活躍する会社BEST100」(『日経WOMAN』6月号発表)では、総合ランキング第6位となった同社の取り組みからヒントを探りました。
1.女性活躍推進/ダイバーシティ推進に本格的に取り組もうとされた背景は何だったのでしょうか?
もともとセブン&アイグループでは、1993年から女性取締役や管理職が誕生していて、女性が活躍できる素地はありました。その後2006年には、当時の会長であった鈴木敏文が「多様な人材を積極登用しなければイノベーションは起きにくい。今後は女性役員の割合を25%まで引き上げていく」と発表、さらに2012年グループ各社の幹部社員が一堂に会する「グループ経営方針説明会」では、グループ全社員に向けて女性の活躍推進を明言、同6月に「ダイバーシティ推進プロジェクト」が発足し、本格始動となりました。
私も2006年に登用された執行役員の1人でしたが、当時は非常に戸惑いが多かったと記憶しています。しかし、自分の役割を全うすることこそが責務であると気持ちを切り換えました。
Q.御社が取り組みで躍進できたポイントは何だったのでしょうか?
「経営トップコミットメントと高速のPDCA」です。
トップが強いリーダーシップを持ち、社内外に向けて女性登用の重要性を発信し続けてくれたのはやりやすかったですね。推進体制をつくって課題を洗い出し、目標を設定し、施策の実施・改善をする。KPIを設定し、PDCAサイクルを回すことが重要です。
Q.具体的にはどんな取り組みをしたのでしょうか?
まずは、一つの試みとして女性が中心となって運営する店舗(イトーヨーカ堂、そごう・西武等)や、あるエリアを女性だけで担当するチーム編成(セブン‐イレブン・ジャパン)等、女性の視点を取り入れるとともに、職域拡大を目的に2012年4月に実施しました。
すると組織がフラットになり意見交換がしやすくなるといった効果もみられました。男性上司だと縦社会の傾向が強く、直接上司に進言することに抵抗がある場合が多いですが、女性の場合は横社会の傾向が強いので、部下からのアイデアや意見に対して、上司も「じゃあ具体的にどうする?」とすぐ具現化できる強みもありました。そういう風通しのよさに加え、会議時間の削減やペーパーレス化が進んだ検証結果となりました。しかし、あくまでもそうした取り組みはテストであり、女性だけの組織というのは不自然なのであるべき姿に置き換えて様々な取組を今でも模索しています。
まず取組みにあたり「課題」が何であるかをみつけるために、
女性社員を約30人選び、本人とその上司に対してヒアリングをおこないました。
上司全員が、彼女たちの仕事ぶりを評価している一方、同時に「扱い方がわからない」という声も多く出ました。一方で女性側は、「今の仕事はやりがいを持っているが、今後のライフイベントを考えると働き続けられるか不安」という声が8割以上だったのです。
Q.女性だけ対策はだめで、あくまで「全社員に対する意識改革」を軸にしているとのことですが?
女性登用に課題がある場合、「女性のキャリア意識や昇進意欲が低い」と女性だけの問題にしたり、女性だけを対象とした施策(両立支援制度など)を実施したりする「女性だけ対策」では課題は解決しにくいと考えています。
ヒアリングの結果、「管理職の意識改革」「女性の意識改革」「制度運用の見直し」の3つの課題を設定しました。
女性がいくら優秀でも、管理職が変わらないと難しい。
そこで、四半期に1度の管理職を対象としたセミナーを実施し、
意識の醸成と行動変容を狙いました。一度、管理職になると、「自分が今まで行ってきたマネジメントは正しかった」といった過去の経験から判断しがちです。まず多様な人材を活かすマネジメントというものを、外部講師からの事例紹介等も通じて啓発し、自ら気付いてもらうための取り組みを実施しています。
女性の意識改革では、女性管理職のネットワークづくり「Women’s Management Community」を数年続けた結果、女性管理職比率も上がってきたので次のフェーズでは女性管理職を目指すための母集団をつくる目的で、若手女性社員向けの「なでしこアカデミー」をスタートしました。
リクエストが多かったのはスキルアップ。ロジカルシンキング、決算書の読み方、プレゼン資料の作り方からプレゼンスキルなど各テーマで実施しています。任意参加にも関わらず、全国の300名を超える女性が参加し、大変好評です。
その他、育休復職者向けオリエンテーションを実施したり、子育て中の社員のネットワーク「ママ’s コミュニティ」(現在は男女向けに「子育てコミュニティ」に変更)、「イクメン推進プログラム」などを運営しています。
社員の子ども達が職場見学・体験でレジ打ちなどを楽しんでもらう「セブンキッズアカデミー」も好評で、職場とは違う家族に見せる顔を他の社員が垣間見られる貴重な機会になりました。
祝祭日の勤務で子どもの預け先がない社員には、本部ビルや各地区の事業所内の会議室や近隣保育所をお借りした「スポット保育」もしており、現状では全国37か所ある事業所のうち4分の3をカバーできるほどに広がっています。もちろん男性や配偶者が弊社にお勤めの場合でも利用できます。毎回本部では40~50名、各地区の事業所でも2~8名程度の利用があります。
Q,女性自身の意識というのはどういうことがネックになっていましたか?
「ライフイベント(出産等)をむかえたときに育児と仕事が両立できるのか」
「今のようにしっかり働き続けられるのか」
という漠然とした不安が多数でした。
この壁は、「どういうことが不安でどうすれば良いのか」ということをきちんと整理して向き合うことで、不安が払しょくされるケースが多いものです。不安に思っていることを社内でコミュニケーションすることが大切です。また、両立を具現化している先輩のロールモデルをたくさんつくっていくことも大事だと考えています。
Q.取り組みはどのような効果が見えてきているのでしょうか?
女性管理職比率は徐々に上がってきました。当初の目標は、2015年2月までに女性管理職比率(課長級・係長級)を20%にする事が目標でしたが、係長級は2014年2月に、課長級は2015年2月に達成。そこで新たに、2020年までに女性の管理職比率(課長級・係長級)30%達成を目標に設定し直し取組みをすすめています
※2018年2月末現在、係長級は32.6%、課長級は23.1%
また、男性の育児家事への参画も進んできましたし、全体的な意識はとても変わってきていると思っています。
弊社は、ワークライフバランスではなく、「ワークライフシナジー」、つまり、仕事と生活の相乗効果を狙おう、ということを発信しています。これは、仕事と生活を分けたトレードオフの関係として捉えるのではなく、それぞれが良い影響を及ぼし合うという考えです。
こうしたことを継続的に発信し、地道に活動し続けることが、最大の近道と感じています。
今後はグループ事業会社の、特に中核事業会社 約30社が方針を理解し、具体的な施策を実践していくことが最大の課題です。グループ横断の会議などで事例発表の場もありますが、足並みをそろえることは一朝一夕に成せることではありません。
Q.日本において女性活躍推進が思ったより進まない要因は何だと見ていますか?
やはり以前の日本の高度経済成長期には合っていて、産業構造が変化した現在では馴染まない、「性別役割分担意識」が根強く残っていることもあると思います。
また、有職女性が70%を超えたといっても、雇用形態や収入・キャリアが同じような条件の人材はまだ少ない。
しかし、人口動態を冷静に見ると、労働生産性は下がっており、男性だけの労働力に頼ったままでは行き詰まるのは明白です。つまり、性別問わずあらゆる人が労働力として参加しないと国や企業の成長はありえないのです。そうした労働力のなかで多数を占める女性の活躍がまず期待されています。
労働供給が上がれば世帯収入が増え、消費が活発になり、企業が潤い、働く人の給与が増え、日本の経済が強くなる、というサイクルになる。
冷静に見れば当たり前のことだと思います。
藤本様、貴重なお話をありがとうございました。
<Profile>
1979年 玉川大学文学部外国語学科卒、日揮㈱、東京ヒルトンホテル勤務後
1988年 ㈱セブン-イレブン・ジャパン入社、鈴木社長(現 名誉顧問)の秘書を
務めながら、秘書室マネジャー、総括マネジャーを経て、2006年5月執行役員
秘書室長に就任。同時に持株会社である㈱セブン&アイ・ホールディングス秘書
室オフィサー及びCSR統括部シニアオフィサー、セブン&アイグループダイバ
ーシティ推進プロジェクトリーダーも兼任。
2014年3月に㈱セブン-イレブン・ジャパン取締役執行役員秘書室長就任。
2015年3月に㈱セブン-イレブン・ジャパン取締役常務執行役員秘書室長。
現在は㈱セブン-イレブン・ジャパン取締役常務執行役員 秘書室長 兼 ダイバー
シティ推進部長、セブン&アイグループダイバーシティ&インクルージョン
プロジェクトリーダー、2017年 ㈱セブン&アイ・ホールディングスの特例
子会社である㈱テルベ 代表取締役社長 兼任。
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