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女性の力を経営に生かすマネジメントのヒント/(株)g-wic

ウーマンエンパワー賛同企業」事務局では、さまざまな企業の取り組みや専門家の取材をしています。

 

今回は社員・管理職が女性100%で女性の強みを生かしたBtoBの新規開拓営業支援事業で11期目を迎えている株式会社g-wic 代表取締役 豊島愛華氏に女性向けマネジメントを中心としたお話を伺いました。

 

 

事務局・谷平(以下、谷平):

女性の良さを生かした営業代行・コンサルティングの会社を26歳で起業されたということですが、立ち上げ経緯や組織について教えてください。

 

豊島愛華氏(以下、豊島):経営者だった父を超えたいという思いもあり、経営をしていくためにまずは売り上げをつくる営業を経験する必要があると感じていたので、通信系の営業会社と営業支援の会社2社にお世話になりました。営業支援の会社で働く中で、「女性だからこそできる営業もあるのではないか」と思うことがあり、女性ならではの営業支援プランを作って社内ベンチャーチームとして立ち上げてみた結果、お客さまからも非常に好評だったため、2011年に独立しました。

現在(21年8月現在)社員、インターンや業務委託を含めて20名の女性の組織です。子育てをしながら働いているのは、2児を育てる私と、関西の時短メンバー1名、出産したばかりのメンバー1名です。

 

谷平:女性が活躍できる会社を設立しようとされた理由は何ですか?

 

豊島:理由は3つありました。

1つ目に、営業職で復帰できている女性が少ないことです。成果に応じて収入を上げられる職種にもかかわらず、女性が出産などのライフイベント後に営業職で復帰されているのを前職で働いていた頃を含めてみたことがありませんでした。復職するという風潮もそもそもあまりなく、非常に勿体ない、この状況を変えていきたい、と感じました。

 

2つ目に、女性の強みをビジネスに生かしたいと思ったことです。

新規開拓をする男性の営業さんもロジカルで素晴らしいプレゼンをする方がいる一方で、相手に警戒されてしまって本音をうまく聞き出せないという課題をよく聞きました。それに対して女性は、相手に共感しながら傾聴できる強みがあり、本音やニーズを聞き出した上で提案できる、と感じることが多く、これをコンセプトに事業展開したいと思いました。

 

最後の3つ目に、女性たちのポテンシャルを発揮できる組織をつくりたかったんです。

男性中心の縦型組織ではなく、女性だけで組織をつくることで、横社会でチームで目的を達成していける力を活かしていきたいと考えたのです。

 

谷平:相手の立場に寄り添ってヒアリングや提案ができる強みが、成果として御社の強みになっているんですね。

 

豊島:はい、多くのクライアント様にご評価いただいています。例えば大手化学メーカー様の新商品がなかなか従来の営業では販路開拓が進まなかったところ、弊社で商品デモンストレーションや営業をすることで、訪問したほぼ全ての現場でリプレイスいただき業績が右肩上がりになった、などの例もあります。

 

谷平:女性のポテンシャルをいかせる組織というのは具体的に社内ではどういうことに留意して運営されているんでしょうか?

 

豊島:社内でのコミュニケーションはかなり大事にしています。1つのタスクを任せるときに背景をしっかり話すなど、納得してもらえるように丁寧に説明することだったり、空気を吸うように常に褒める、という称賛文化も大切にしています。電話営業で、商談が1件獲得できたというタイミングでは、皆でおめでとうと声掛けするなど、盛り上がっています。

また朝礼では、前営業日によかったことやお互いの感謝を発表する時間をつくったりしています。

社内で萎縮してしまって、本来5分で終わる仕事が周りに聞きづらいことで30分かかる、などは無駄だと考えているので、仲がいい組織=効率よく仕事ができる関係性だと考え、意識していますね。。

 

谷平:言わなくてもわかるだろうとか、できて当たり前だよね、ではなくて、感謝や褒めることをちゃんと言葉にすることを大切にしているっていうことですね。

 

豊島:そうだと思います。月末に締め会というお疲れ会を実施しているのですが、その月の誕生日のメンバーのお祝いもしています。日頃なかなか伝えられない感謝をメッセージカードにすることで、泣くメンバーもいたぐらい毎月感動しています。今年は業績がよく、沖縄に旅行にいったり、営業強化合宿でお互いの人間性や価値観を知るワークの機会をもうけたりと、社内イベントも工夫をしています。

※沖縄社員旅行の様子

 

谷平:なかなか女性の活躍推進(管理職のジェンダーバランス向上)が進まない背景はどう見ていますか?

 

豊島:日本の「教育」に課題があると考えています。女性は管理職になるための教育を受けてられていないように感じています。学生でも、ファシリテーターは男性で議事録は女性、など、女性=補佐的役割だと認識している人をよく見かけます。もちろん、そうではない環境の方もいらっしゃいますが、チャレンジできる環境が圧倒的に少ないなと感じます。

 

谷平:小さいころからのジェンダー教育も影響が大きいですよね。御社の教育・育成で意識していることはありますか?

 

豊島:ポテンシャルのあるメンバーにはどんどん責任のある仕事を任せていきます。入社して間もないメンバーでも提案内容を自分で考えてみてもらったり、成果を出せているメンバーには惜しみなくポジションを解放しています。権限委譲をすることで、経営視座が高まり、自分ごととして会社の成長を考えることができると思います。

 

谷平:働く個人側に伝えたいことはありますか?

 

豊島:日本では男女の生涯所得の差が5~6000万円以上あると言われており、ジェンダーギャップ指数は、156ヶ国中120位で、先進国最大、G7最下位です。またシングルマザーは120万人おられるなかで、そのうち半数以上は相対的貧困状態にあると言われています。こういった現状を知らない学生さんも多く、女性活躍と言われながらも、なかなか結果に繋がっていないことを、まずは知ってほしいなと思います。

 

谷平:ダイバーシティ推進や女性活躍を模索する企業さんにメッセージをお願いします。

 

豊島:女性活躍を推し進められている企業様のなかで、女性だから管理職にしようですとか、まだ育成途中にも関わらず、制度が先走ってしまっているような企業様のお話を聞くことがあります。

弊社もまだまだ模索中ですが、「守破離」を意識しておりまして、最初から丸投げしてできるわけはないということを理解しておくことが重要かと思います。

何度も何度も、川に字を書く如くに、同じことをフィードバックすることもあるかもしれません。愛情をかけて育成に力を入れていても、本人には伝わっていないこともあるかと思います。それでも少しずつ自立できるように支援し、その次に部下をマネージメントするということを、失敗も含めて見守っていくことが大切だと考えています。

 

育成したメンバーが育成できる立場になる、その循環が組織を創っていくことに繋がっていると思います。その循環をつくるために、弊社では週1回、目標設定面談を1on1で実施したり、必ず共有したことをアウトプットしてもらうというルールをつくっていたりします。

 

また男性管理職の方で、女性は感情的になるということや、すぐ泣くということ懸念してるという話を聞きますが、私は社内の報告会でメンバーが感情的になったり泣いたりしても、それだけ真剣な証拠と捉えておりますし、全然問題ないと思っています。

他にも男性の方で一方的にアドバイスされる方が多いという話もありますが、単に話をきいてあげることでストレスが解消できることもあるかと思いますし、話を聞いてあげた上で、自分で解決できるようにアドバイスをしていくことが大事だなと。

 

と話している自分が女性なので、私が望むことを実践しているだけなんですが。笑

なので、男性の方は女性に率直に意見を聞くことが重要じゃないかと思います。

 

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株式会社g-wic 代表取締役 豊島愛華

大学卒業後、通信系の営業会社に入社。その後ベンチャー企業である営業支援会社に転職。

営業支援の会社で働く中で、「女性だからこそできる営業もあるのでは」と思うことがあり、

社内ベンチャーとして、女性による営業支援プランを立ち上げる。やってみた結果、お客様からの支持も厚く、事業拡大を図るため社内ベンチャーから独立。2011年26歳で株式会社g-wicを設立。現在は2児のママでありながらコロナ禍で過去最高売上を更新中。

 

 

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