ママハピ

子どもの「お腹をすかせる経験」を奪っていませんか?

先日、電車に乗っていると食べ物の強い臭いがどこからかしてきます。となりには私立中学校に電車で通っている生徒さんが座っています。“うん、やっぱり隣からだ”と思ったものの、しばらくは気にしないようにしていました。

 

口を半分開けたままなので、臭いは周囲にただよっていました。非常に香料の強い飴だったせいか、私は、頭がだんだん痛くなってきてしまいました。

 

自分が嫌な臭いだったというだけの個人的な事情で、席を離れるのは、その子にも悪いなぁとは思ったのですが、我慢ができなかったので席を立ち、空いていた彼の目の前の席に座りなおしました。

 

ふと目をやると、彼は電車の床に直に置いた小さなコンビニの袋から、飴を出しては食べ、出しては食べを繰り返していました。それもボリボリと音をたてて・・・。

少しびっくりして、そ~っと見ていると、ビニール袋の中には、他にも飴の袋が入っていました。次の駅で降りるために、彼が立ち上がったとき、ビニール袋の後ろから出てきたのは、甘味料たっぷりの缶ジュース。それを立ち上がるのと同時に、飲み干し電車を後にしました。

 

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よくわからない気分のまま、なんだか、とてもやりきれない思いでいっぱいになりました。それと同時に、なんだか切なく苦しい感覚に見舞われました。

 

中学生となれば、お小遣いも持ち、一人で行動する機会も増えるので、親がこの行動を知っているとは限りません。もしかしたら、家で食べることを禁じられていたお菓子を、外で思いっきり食べているのかもしれません。逆に、止められることもなかったのかもしれません。それは、いくら想像してもわかりません。

 

でも、彼は、

将来を担う、未来を生きる子ども。

そして、身体も中身も成長しようとがんばっている時期。

 

時間は16時半。これから彼はどこに向かう予定があったのでしょうか。彼の夕飯は何時の予定なのでしょう。

 

私は、小さい子どもから大人までの方に向けて食育の授業をしていますが「お腹を空かせる経験をしていない、もったいない人が多いなぁ」としばしば感じます。お腹を空かせた後には、『おいしい!』と感じられる時間が待っているのに、その経験をしていないのは、とってももったいないこと。

 

「うちの子、小食なんです」というお母様と一緒にいると、子どもが「ママ、お菓子食べていい?」と聞いてくる場面に遭遇しました。お母様は、ごく普通に、すぐに「いいわよ」と。その後、お菓子のたくさん入っているボックスの前で、その子は嬉しそうに選んでいます。お母様は、他の大人とのおしゃべりに夢中ですから、その子がお菓子をどれだけ取って食べたのかは気にしていません。

 

「お腹をすかせる」という経験を奪ってしまっているのは、親なのかもしれません。

 

もしかしたら、彼も「お腹をすかせる」ことでもたらせる「おいしい」という経験が少ないのかもしれません。また、それとはまったく別の問題なのかもしれません。

 

でも、彼の行動の一部は、経験が作っているというのは確かです。

 

最近は、子育て論の中で

「何事も経験が少ない子どもたち。だからこそ、たくさんの経験をさせてあげよう」というのがスタンダードになってきました。

 

でも、過剰に与えられる経験が、日常でできる「体験」を奪っていることもあるのではないかと思うのです。それも、親が子どもを愛おしく思い、子どもに過剰にしてあげるばかりに、「体験」をうばってしまっている。

 

子ども自身が自分でそれに気がつくことができない、だからこそ、親が気がついて経験をさせてあげてほしいのです。

 

手軽になんでも安価な金額で購入できる日本。だからこそ「お腹をすかせることのできる経験」という基本的な体感を持って欲しいと思います。

 

次回は、「HappyFoodのCRIATIVE食育研究所」と「子育てマイスター協会」の観点から「お腹をすかせるということ」について、もう少し詳しくお話をさせていただこうと思っています。

 

creative&logical&happyなHappyFood さとうりさ からでした。

 

 

HappyFood代表/食育から生きる活きるを創る~Creative食育研究所 所長/
一般社団法人子育てマイスター協会 マネージングディレクター

さとう りさ   HPはこちら

 

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